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高知地方裁判所 昭和51年(行ウ)4号 判決 1977年10月31日

高知市高須一七六四番地一

原告

有限会社セトフアニチユア

右代表者代表取締役

小笠原史郎

右訴訟代理人弁護士

小松幸雄

高知市本町五丁目六番一五号

被告

高知税務署長

高橋實

右指定代理人検事

山浦征雄

右指定代理人

藤田正博

岡田卓

浜口晴彦

国税訟務官 木村克

大蔵事務官 中井充

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五〇年六月二三日付でなした原告に対する昭和四七年五月分から昭和四九年一一月分までの間の物品税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分はこれを取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1(一)  原告は、造作家具等を製造する会社である。

(二)  被告は原告に対し、昭和五〇年六月二三日付をもつて、昭和四七年五月分から昭和四九年一一月分までのうち、昭和四八年四月分、六月分及び九月分を除く各月分ごとの物品税の課税標準の合計額を一六、二五二、〇〇〇円、納付すべき税額の合計額を三、二一七、二〇〇円とする決定及び無申告加算税合計三二〇、六〇〇円の賦課決定の各処分(以下本件処分という)を行ない、原告に通知した。

2  原告は、これに対し昭和五〇年七月二九日被告に異議申立てをしたが、被告は昭和五〇年一〇月一七日これを棄却する旨の決定をしたので、原告はさらに昭和五〇年一一月一一日国税不服審判所長に審査請求をしたが、同所長は昭和五一年三月一八日これを棄却する旨の裁決をなし、そのころ原告に通知した。

3  被告の異議申立てに対する棄却の理由は、次のとおりであり、国税不服審判所長の審査請求に対する棄却の理由もほぼ同旨である。

すなわち、物品税法第三条第二項には、第二種の物品の製造者は、当該第二種の物品(課税物品に該当するものに限る。)で、その製造に係る製造場から移出されたものにつき、物品税を納める義務があると規定しており、物品税の納税義務は、課税物品の販売価格に物品税相当金額が含まれているか否かにかかわらず、課税物品を製造場から移出することにより発生するものであるから、原告が製造販売した家具類に対して課税した本件処分は適法であるというにある。

4  しかしながら、被告の右処分は次の理由により違法である。

(一) そもそも物品税は消費税としての本質から消費者が負担すべきものであるところ、物品税法第三条第二項の規定は物品の製造者に物品税納税義務を課しているが、これは取引の対価として受領する金額に物品税相当の金額を含ましめ、その結果、税を消費者に負担させるための税徴収上の技術的規定に過ぎず、物品税相当の金額を取引の相手から受領し得ない場合(すなわち、物品税相当額を消費者に負担させたくてもそれができない場合)にまで、物品の製造者に税を負担させるための規定とは到底解されないところである。

(二) ところで原告は、建築請負業者等の下請業者として、造作家具を製造しているものであるが、下請の際の受注金額は、建築工事の施主が設計事務所に依頼して作成させた建築物の設計に含まれた造業家具に係る見積金額に基づいて決定され、設計事務所では、できる限り良い建築物をできる限り安価に施工できるよう設計するために、その建築物に含まれた造作家具に係る見積金額を物品税相当額を加算しない金額により算出しており、原告及び同業者は、受注に当り、物品税相当額をその見積金額に加算する余地が全くない実情にある。

(三) したがつて、右のような実情のもとで、被告が、原告の製造にかかる造作家具類に対して課税した本件処分は違法である。

5  よつて、原告は被告に対し、本件処分の取消を求める。

二  被告の請求の原因に対する認否と反論

1  請求の原因1ないし3は認める。同4は争う。

2  物品税法第三条第二項は、第二種物品の製造者はそれぞれ当該第二種の課税物品で、その製造に係る製造場から移出されたものにつき物品税を納める義務がある旨規定する。

すなわち、第二種物品に課せられる物品税は、当該物品の製造者に納税義務があり、課税物品を当該物品の製造場から他の場所に移動させるという事実行為があれば(その移動の原因が販売のための移出、無償譲渡のための移出であろうと)物品税の納税義務が成立するのであつて、当該物品税相当額を現実に需要家に転嫁したかどうかにより物品税課税の課否が決められるものではない。

原告は昭和四六年一二月二二日から物品税営業(製造)を開始した旨の申告書を昭和四七年五月二五日所轄高知税務署長に提出して家具類の製造を開始し、昭和四七年三月に製造移出した造作家具について同月分の物品税納税申告書を、昭和四七年五月二五日に所轄税務署長に提出しており、また、原告は本件課税処分の対象となつた造作家具についても、物品税法の別表、課税物品表に掲げる第二種物品に該当すること、及び当該物品を製造し移出したことをすべて認めている。

また、原告のいう「負担させたくともそれができない場合」とは、要するに右家具の製造に要した費用(原材料費、人件費等)に物品税相当額をおり込んだものを取引価格としたら、他の製造業者との競争に敗れるため、あえて右物品税相当額を加えないものを取引価格としたとのことのようであるが、それは、競争力の強化、市場の拡大等を計つた営業対策に過ぎず、物品税の納税義務の存否とは全く関連性がないものである。

従つて、原告の主張は全く理由がない。

第三証拠

一  原告

乙号各証の成立を認める。

二  被告

乙第一号証、第二号証、第三号証の一・二

理由

請求原因1ないし3項の各事実は当事者間に争いがなく、本件課税処分の対象となつた造作家具が、物品税法第二条第一号に規定した課税物品に該当すること、原告が右造作家具を製造し、これを製造場から移出したことについては原告においても明らかに争わないところである。

原告は、物品税相当額を消費者に負担させたくてもそれができない場合、物品の製造者には納税義務がないことを前提として、請求原因4項のとおり主張するが、物品税法第三条第二項によれば第二種物品に対する物品税は、課税物品の製造者が当該物品を製造場から移出するという事実行為があれば課税の原因が発生し、製造者に物品税納税義務が生ずるのであつて、物品の製造者が物品税相当額を消費者に転嫁したかどうか、また転嫁することができたかどうかということとは関係がないと解される。そうだとすると、原告の右主張は、さらにその余の点について判断するまでもなく、既にこの点において理由がない。

よつて被告の本件処分は適法というべく原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鴨井孝之 裁判官 松村雅司 裁判官 高井和伸)

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